講演会「『曽我物語』にみる印刷技術の発展」

otsuma_kokatsuji_leaflet『曽我物語』は、鎌倉末期から室町前期にかけて成立したとされる軍記文学の一種で、幼くして父を失った兄弟が、十八年間の艱難辛苦の末についに仇を討ち果たす仇討ちの物語です。軍記文学に分類されますが、兄弟の一代記的な性格が強く、『平家物語』のようないわゆる軍記物語に対して、准軍記文学と呼ばれます。

古典の作品の多くは写本(手で書き写して作られた本)で伝えられたため、写し間違いや意図的な書き換えによりいくつかのバリエーションが生まれてきました。軍記文学の多くがそうであるように、この作品も多様な諸本を展開させています。

そうした本文の変化を終息へと向かわせたのが、近世期の出版文化でした。特に、近世初期の古活字版による出版は、『曽我物語』の本文ばかりでなく、多くの軍記文学のテキストに大きな影響を及ぼしたと考えられます。

本講座では、『曽我物語』の古活字版三種を題材として、そのテキストがどのように整えられていったのか、そしてそれは、当時の印刷技術とどのように関わっていたのかについてお話いただきます。

また、講演会場にて、大妻女子大学所蔵の『曽我物語十二行古活字版(全巻)』を展示します。目にする機会が少ない古活字版を身近にご覧ください。

otsuma_kokatsuji_photo_koido小井土 守敏こいど もりとし氏/大妻女子大学文学部教授
1968年生まれ。中世文学、文献・書誌学を中心に研究。『曽我物語』『平家物語』など軍記物に関する論文多数。

日時 2013年11月20日(水)18:30~20:00 開場18:00
場所 千代田図書館9階=特設イベントスペース
定員 40名/事前申込不要、当日先着順
参加費 無料
講師 小井土守敏氏/大妻女子大学文学部教授
主催 大妻女子大学国文学会/千代田区立千代田図書館
問い合わせ 千代田図書館 03-5211-4289・4290
otsuma_kokatsuji_photo2 曽我物語十一行古活字版 巻一冒頭
大妻女子大学図書館蔵
otsuma_kokatsuji_photo3 曽我物語十二行古活字版 巻一冒頭
大妻女子大学図書館蔵
otsuma_kokatsuji_photo1 曽我物語十行古活字版(古版本切れ)巻一
大妻女子大学草稿・テキスト研究所所蔵