内務省委託本

内務省委託本の画像

戦前期の日本では、中央官庁の一つであった内務省が出版物の検閲を行っており、全国で出版されたさまざまな本が内務省に納本されていました。1937(昭和12)年頃以降、内務省で検閲業務に用いられた原本の一部が、千代田図書館の前身である駿河台図書館をはじめとする市立図書館4館に委託されることになりました。千代田図書館では、これらの本を「内務省委託本」と呼んでおり、現在約2,300冊が確認されています。

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千代田図書館の所蔵する「内務省委託本」は、実際に検閲に使用されたもので、内務省の係官が内容をチェックするために引いた赤線・青線、出版の可否についてのコメントなどが残されています。発禁本は含まれていませんが、当時どのように検閲が行われていたのかを知ることができるという点で、出版史上貴重な資料です。

従来は閉架書庫に収められている資料の一部として所蔵しておりましたが、出版文化史を研究する浅岡邦雄氏(中京大学文学部教授)が、検閲を含めた戦前期の出版事情について研究される中で、これらの本の貴重性に注目されたことがきっかけとなり、2007年に全閉架資料約9万冊を1冊ずつ調べ、「内務省委託本」として抽出しました。

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